無名人時計主宰の書斎
COLUMN

法則19 家族には、初対面の聞き手になる|家族の話が聞けないときに

親の同じ話にイライラする。子どもが何を考えているか分からない。パートナーの愚痴を、最後まで聞けない。

他人の話は聞けるのに、家族の話は聞けない。そのことに、罪悪感を持っている方は多いと思います。

でも、家族は、聞くことがいちばん難しい相手だと、私たちは考えています。

聞き方から考える話し方。法則19は、家族の話の聞き方です。

法則19 家族には、初対面の聞き手になる

家族のままで聞こうとせず、数分だけ、初対面の聞き手になる。

聞き方から考える話し方 法則19 家族には、初対面の聞き手になる。家族のままで聞こうとせず、数分だけ、初対面の聞き手になる。× 家族のまま聞く ○ 初対面の聞き手になる

家族には、話せない

家族の話が聞けないのは、聞く力がないからではありません。難しさの理由は、話す側から見るとよく分かります。

無名人インタビューでは、初対面の聞き手を前に、家族には言えなかったことが語られることがあります。

一つ目は、心配をかけたくないことです。

(前略)心配させたくないから、本当にしんどいことや病気になったことも、父親には言わなかったですね。心配かけたら絶対飛んでくるから。(後略)

── 生まれ変わっても私は私に生まれ変わりたい人(無名人インタビュー)

この語り手は、父親が心配して飛んでくることを予想して、言わずにいました。大事だからこそ、言えないことがあります。心配は愛情ですが、話す側から見ると、自分の話が相手の心を乱すことにもなります。

二つ目は、説明を求められることです。

(前略)ただ、どうなんですかね。あんまり中学の記憶がなくて。私、休んだことないんですよ。中学そんだけつらかったんですけど、父親に言えなくて。休むって言ったら、なんでだってなるだろうし、それが嫌だったんだと思うんです。(後略)

── 何にもならない。それが私のゴールなのかもしれない人(無名人インタビュー)

この語り手は、休むと言えば「なんで」と聞かれるだろうと思い、それが嫌で言えなかった、と話しています。家族は当事者なので、理由を聞きたくなるものです。でも、つらいさなかにいるときは、その説明自体が難しいことがあります。

三つ目は、親の前でも、人の目を気にする自分のままでいることです。

あんまり親に本心は話さなかったですね。本心を話さないというか話せないっていうんですかね。それこそ人の目を気にすることの延長なのかもしれないんですけど。親のことは好きでしたけど、心から信頼を置いてたかって言われると、そこもモヤっとするなって今思って。(後略)

── 八方美人で悩んできた人生の人(無名人インタビュー)

「今思って」。親を心から信頼していたか、という問いへの答えが、初対面のインタビューの場で、言葉になっています。

聞けないのは、あなたが家族の側にいるから

ここまでは、家族に話せない側の話でした。裏返せば、そのままあなたの話です。

家族の話が聞けないとき、あなたは、心配してしまう側、説明を求めてしまう側、長く見てきた側にいます。

子どもの話を聞けば、心配が先に立つ。親の話を聞けば、「またその話」という履歴が邪魔をする。パートナーの話を聞けば、生活への影響を考えてしまう。

家族の話が聞けないのは、あなたが冷たいからではなく、当事者だからです。心配も、利害も、履歴も背負ったまま聞くのは、難しいことです。

初対面の聞き手を借りる

だから、家族の話を聞くときは、意識して「初対面の聞き手」を借りてきます。

心配が湧いたら、口に出す前に、質問をひとつ。「大丈夫なの?」ではなく、「今、どんな感じなの?」。

説明を求めたくなったら、理由の前に、気持ちを聞く。「なんで?」ではなく、「そのとき、どんな気持ちだった?」。

履歴を使わない。「あなたは昔からそうだ」と言いそうになったら、今日初めて会った人の話として聞き直します。

つまずいたとき

全部はできなくて、かまいません。会話のうち数分でも、当事者の椅子から降りて聞いてみる。それで十分です。

うまくいかない日も、あります。家族のままで聞いてしまった日は、次の数分でもう一度、初対面の聞き手になります。

まとめ

法則19 家族には、初対面の聞き手になる

家族のままで聞こうとせず、数分だけ、初対面の聞き手になる。

家族の話が聞けないのは、あなたの欠陥ではありません。心配と、説明の要求と、長年の履歴。家族という関係が、聞くことを難しくしています。だから、家族のままで聞こうとしないで、道具を借りていい。

ここまで19の法則を見てきました。最初の法則1 間を楽しむに、もう一度戻ってみてください。家族との会話も、二人のあいだにあるテーマを、一緒に見るところから始まります。


無名人インタビューについて

無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。16人の制作メンバーが年間約400本、これまでに1,500本以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。

聞くことは愛すること。

公開

栗林康弘

このコラムを書いた人

栗林康弘(qbc)

無名人インタビュー主宰/聞く学校 校長/パーソナルコーチ

2020年に無名人インタビューを始めました。自分で872本のインタビューを聞き、423本を編集。いまは自分を含む16人の制作メンバーで年間約400本のインタビューを行い、これまでにのべ132名が聞き手・編集として参加しています。公開した実例は1,500本以上。聞き方の体系として「平聴(フラットリスニング)」を提唱し、2026年に「聞く学校」を開きました。1978年生まれ。(「聞いた」「編集した」は2026年6月30日、チームの本数は2026年8月1日時点)

栗林康弘のプロフィール →
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