無名人時計主宰の書斎
COLUMN

法則1 間を楽しむ|会話が楽しくならないのは、心の焦点が自分か相手にあるから

話していても、なんだか楽しくない。何を話せばいいか分からない。相手にどう思われているかが気になって、会話に集中できない。

そういうとき、心の焦点は、自分か相手に向いています。

聞き方から考える話し方。最初の法則は、焦点の置き場所です。

法則1 間を楽しむ

自分でも、相手でもなく、二人のあいだにあるテーマに、心の焦点を当てる。

聞き方から考える話し方 法則1 間を楽しむ。自分でも、相手でもなく、二人のあいだにあるテーマに、心の焦点を当てる。図:自分と相手のあいだに「野球」というテーマ。×「私は野球を知らない」(焦点が自分)、×「相手は野球に詳しい」(焦点が相手)、○「その選手、どんな人なの?」(焦点が間)

焦点が「自分」にあるとき

「私はこれを知らない」「私は話が下手だ」「変なことを言ったらどうしよう」。

焦点が自分にあると、頭の中が自分の心配でいっぱいになります。相手に選ばれよう、よく思われようとする会話も、焦点は自分にあります。

自分の話を披露する、知っていることをたくさん並べる、反応だけを返す。どれも、焦点が自分にある話し方です。

焦点が「相手」にあるとき

「この人は何者だろう」「どう思っているんだろう」。

焦点が相手にあると、質問が相手を調べるものになります。休みの日は何をしているか、仕事は何か、出身はどこか。答えは返ってきますが、相手は会話の「参加者」ではなく、調べられる「対象」になってしまいます。会話ではなく、取材になってしまうんです。

焦点を「間」に置く

焦点を置くのは、そのどちらでもありません。二人の間にある、テーマです。

たとえば、職場で野球の話を振られたとします。あなたは野球を知らず、相手は詳しい。

このとき、「自分は野球を知らない」「相手は野球を知っている」と考えると、焦点は自分と相手に分かれます。知らない自分が恥ずかしくなり、詳しい相手に気おくれします。

そうではなく、野球について、その選手について、考える。

そうすると、「その選手のことを知りたい」「どんな人なの?」が自然に出てきます。

「その選手って、王選手と比べて、どれぐらいすごいんですか?」

知らないことは、弱みではなくなります。二人のあいだにあるテーマを、一緒にのぞきこむための入口になります。

インタビューの現場では

無名人インタビューの実際の回です。語り手が、ショートフィルムを2回観るワークショップを開いている、と話した場面から。聞き手は、その「2回観る」について聞きます。

「2回観るってどんな感じになるのですか?」

面白いなって思うのは、意外と人間って、初めて観る映画、いろいろ見落としてたりとかするんですよ。(中略)それで、2回目観たときに、こんなところに看板あるわとか、たくさん気づきが得られるっていうのが面白さっちゃ面白さですかね。

聞き手は、語り手のことを調べるのでも、自分の話をするのでもなく、「2回観る」というテーマそのものについて、思ったことを返します。

「確かにいいですね。本は輪読とかあるんですけど、映画はないですもんね。」

ショートフィルム、もうちょっと知名度上がってくれるといいんですけど、手軽に見れないというか。そんなにないんですよね、観れる場所であったりとか。

「映画って、30分で2時間の映画と同じ金額とれないので、みたいになると。そういう意味で短編が嫌われるんじゃないかなと思うよね。」

多くの人がショートフィルムに触れたことがないので、10分の映画っていうのがよくわからないみたいな。え? 予告編なんですか? みたいな感じなんですよ。(後略)

── まじめな人(無名人インタビュー)

二人が見ているのは、互いの顔ではなく、ショートフィルムです。本の輪読と比べてみる。値段のことを考えてみる。テーマを二人でのぞきこんでいるから、話は自然に次へ進んでいきます。

間とは、相手を巻き込むこと

間に焦点を置くというのは、必ず相手を巻き込む、ということでもあります。

相手の言葉、相手の体験、相手の予定。それを受け取って、自分の一言に入れて返す。そうすると、その話題は、相手のものでも自分のものでもなく、二人のものになります。

その場を、全力で楽しむ

間を楽しむと、うまく話そうとしなくてよくなります。見るのは自分でも相手でもなく、目の前のテーマだからです。その場を最高に、全力で楽しむ。それがいちばん大切です。

自分も楽しい、相手も楽しい、その場全体が楽しい。会話が続くのは、その結果です。

まとめ

法則1 間を楽しむ

自分でも、相手でもなく、二人のあいだにあるテーマに、心の焦点を当てる。

次の法則2は「その場にいる」。間を楽しむには、まず、その場にいることからです。


無名人インタビューについて

無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。16人の制作メンバーが年間約400本、これまでに1,500本以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。

聞くことは愛すること。

公開

栗林康弘

このコラムを書いた人

栗林康弘(qbc)

無名人インタビュー主宰/聞く学校 校長/パーソナルコーチ

2020年に無名人インタビューを始めました。自分で872本のインタビューを聞き、423本を編集。いまは自分を含む16人の制作メンバーで年間約400本のインタビューを行い、これまでにのべ132名が聞き手・編集として参加しています。公開した実例は1,500本以上。聞き方の体系として「平聴(フラットリスニング)」を提唱し、2026年に「聞く学校」を開きました。1978年生まれ。(「聞いた」「編集した」は2026年6月30日、チームの本数は2026年8月1日時点)

栗林康弘のプロフィール →
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