初対面の人と話していて、会話が続かない。ひとつ質問して、答えが返ってきて、「そうなんですね」。そのあと、次の話題を探しているうちに沈黙がくる。
会話が続かないとき、多くの人は話題の数が足りないと考えます。そう考えるのは自然です。だから、天気、仕事、趣味、出身地と、話題のリストを頭の中に用意する。
この記事で書くのは、ネタが要らなくなる聞き方です。会話が続かないとき、問題は話題の少なさより、話題を変える早さにあることがあります。続けるには、相手の話を伸ばして、そこから広げる。そのための2つのことばを、実際のインタビューから紹介します。
1. 話題を変えるのが早い
よくある会話です。
「お休みの日は何をしてるんですか?」
「最近は、よく散歩してます」
「そうなんですね。お仕事は何を?」
「事務です」
「へえ。ご出身は?」
質問は3つ目に入りました。答えも返ってきています。それでも、会話が続いた感じはしません。
相手が「散歩してます」と言ったとき、そこにはまだ続きがあります。どこを歩くのか。いつからなのか。なぜ散歩なのか。その続きを聞かずに、聞く側が次の話題へ移っています。
話題を変えるたびに、相手は新しい話を最初から始めなければなりません。だから答えが短くなり、また次の話題が要ります。
次の話題を探しているあいだは、相手の答えも耳に入りにくくなります。頭が真っ白になるのは、相手の話を聞くことと、次の話題を探すことを、同時にやろうとしているときかもしれません。
2. 2つの法則と、2つのことば
無名人インタビューでは、有名ではない人に60分話を聞き、1,500本以上を記事にしてきました。そこで聞き手がしていることを、2つにまとめます。
法則1 伸ばす:次の質問は、相手の答えの中の言葉で作る
ことば:「〇〇?」(相手の言葉をひとつ拾って、「?」をつける)
法則2 広げる:その話がひと区切りしたら、時間を先へずらす
ことば:「その後は?」
覚えるのは、この2つの魔法のことばだけです。主宰の栗林が聞き手をした回のうち、本文を手元に保存してある約570本を読み返すと、相手の言葉に「?」をつけただけの質問は、100本以上の回に出てきました。「その後は?」も、20本以上の回で使っています。
話題を決めるのは、聞く側ではなく、話している相手です。聞く側は、相手が出した話を伸ばし、ひと区切りしたら先へ広げます。

3. 法則1 伸ばす:「〇〇?」
さっきの会話を、伸ばしてみます。
「お休みの日は何をしてるんですか?」
「最近は、よく散歩してます」
「散歩?」
「はい、家の近くの川沿いを。1時間くらい」
「1時間?」
「けっこう歩きますよ。去年くらいからかな。仕事で座りっぱなしなのがしんどくなって」
「そうなんですね」の代わりに、相手の言葉をひとつ拾って、「?」をつけて返しただけです。相づちに迷ったときも、これで足ります。
実際のインタビューです。聞き手が「もしも今の営業のお仕事に就いてなかったら、何をされていましたか?」と聞くと、語り手はこう答えました。
それが一番怖い。
聞き手が返したのは、一言です。
「怖い?」
今のこの仕事に就いてなかったら、本当に涙が出てくるぐらい怖い。もう私、パートをする以外、きっとなかったと思うんですよね。(中略)働いてるんじゃなくて、生きがいなんですよね、もう。
── 命を使って、何か懸命にやらなければいけないっていうのを、高校のときに教わった人(無名人インタビュー)
「怖い」の一語を返しただけで、その人にとって仕事が何なのかまで話が伸びました。
「〇〇?」のあとに何を聞けばいいか分からないときは、同じ話の中の4つの方向を聞きます。いま(どのへんを?)、気持ち(どんな感じ?)、きっかけ(なんで?)、これから(続けそう?)。まだ聞いていない方向を、ひとつ聞けば足ります(くわしくは質問が思いつかない人のための、たった4つの質問)。
4. 法則2 広げる:「その後は?」
同じ話を伸ばしていくと、何があったか、なぜそうなったかまで出て、話がひと区切りするところがきます。ここで初めて、話を広げます。
広げるときは、まったく新しい話題を出すのではなく、いまの話の時間を先へずらします。ことばは「その後は?」です。
実際のインタビューで、2つのことばを続けて使った場面です。語り手が、転職して2社目は観光施設で働いた、と話しました。聞き手は、その言葉を拾って返します(法則1)。
「観光施設?」
はい。そうなんですよ。
「それは、好きだったから?」
いや、全く好きとかもないぐらい興味がないぐらいだったんですけど、(中略)もうその辞めた1年ちょっとぐらい実家にいまして、なので「もう早く出たい、実家から出たい」っていう思いで、ちょうど募集があったので「ここいこ」みたいな感じで受けて受かって、みたいな感じでした。なんで正直そんな興味とかも全くなかったですね。
仕事を選んだ理由まで出て、話がひと区切りしました。聞き手は、時間を先へずらします(法則2)。
「その後は?」
でもその後、そのお仕事がめちゃめちゃ楽しくて、入った後はすごい楽しくて(後略)
── 未来。そうですね、どうなんだろう。難しいですね。なんか、あんまり何か、わかんないです。わかんない。わかんないです。人(無名人インタビュー)
「その後は?」は、内容のない質問です。それでも、話は途切れずに次の時期へ進み、「興味がなかった」仕事が「めちゃめちゃ楽しくて」に変わっていきました。第1節の会話の「お仕事は何を?」との違いは、聞く側が話題を変えたのではなく、相手の話の続きとして聞いていることです。
5. うまくいかないとき
沈黙がきたとき
相手が黙っているのは、次に何を話すか考えているときもあります。少し待って、それでも続かなければ、さっきの話に戻ります。「さっきの川沿いって、どのへんなんですか?」。新しい話題を出すより、戻るほうが楽です(沈黙が怖い人へ。待つ技術)。
答えが短いままのとき
第4節の「ひと区切り」は、何があったか・なぜかまで話したあとのことです。そうではなく、最初から答えが短く、「〇〇?」と返しても短いままで、表情も固いなら、その話は相手が今は話したくない話かもしれません。無理に伸ばさず、別の話へ移って構いません。
6. まとめ
会話が続かないときは、話題を増やす前に、相手の話を伸ばして、広げてみてください。
法則1 伸ばす:相手の言葉をひとつ拾って「〇〇?」
法則2 広げる:話がひと区切りしたら「その後は?」
無名人インタビューについて
無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。16人の制作メンバーが年間約400本、これまでに1,500本以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。
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