無名人時計主宰の書斎
COLUMN

法則9 待つ|沈黙が怖いときは、相手が考えている時間だと思って待つ

会話の中で沈黙が訪れると、いたたまれなくなる。何か言って、埋めてしまう。質問を重ねたり、話題を変えたり、自分の話を始めたり。

沈黙が怖いのは、沈黙を失敗だと思っているからかもしれません。会話が途切れた。場が凍った。自分のせいだ、と。

聞き方から考える話し方。法則9は、待つことです。

法則9 待つ

沈黙は、相手が考えている時間。埋めずに、待つ。

聞き方から考える話し方 法則9 待つ。沈黙は、相手が考えている時間。埋めずに、待つ。× 沈黙を、埋める ○ 待つ

昆布のだしは、すぐには出ない

料理にたとえます。昆布のだしは、お湯に入れた瞬間には出ません。じっくり待って、初めて出てきます。急いでも、早くはなりません。

人の言葉も同じです。用意してあった答え、いつも話していることは、すぐに出てきます。でも、その人がまだ一度も言葉にしたことのないものは、探す時間が要ります。沈黙は、相手がいま、自分の中を探しに行っている時間であることが多いものです。

そこで聞き手が口を挟むと、探しに行っていた相手は、手ぶらで呼び戻されます。だしが出る前に、昆布を引き上げてしまうのです。

インタビューの現場では

無名人インタビューの実際の回です。沈黙の間まで含めて、そのまま引用します。

「これをするまで死ねないみたいなものはありますか?」

まず、ここまでの流れで言うとお店を作るのが一つで。うーん…確かにあんまり考えたことなかったです。うーん……今、出身の神戸を離れて東京に来て、今までお世話になった人と割と疎遠になってしまったんですけど、もう一回会いたいなって今ふと思いました。(後略)

── 何が起こるかわかってなくてでも楽しそうな人(無名人インタビュー)

「うーん」がふたつ。この間、聞き手は何も言っていません。そして間の向こうから出てきたのは、用意された答えではなく、「もう一回会いたい」という、その場で生まれた言葉でした。

もし最初の「うーん」で、「難しい質問でしたね、次にいきましょう」と埋めていたら、この言葉は、出てこなかったかもしれません。

もうひとつ。優しさが大事だという語り手に、その理由を聞いた場面です。

「優しさがコメウソさんの中で重要な要素になってるとお見受けするんですけど、それはなぜだと思いますか。」

なんでだろうな自分が優しくしてもらったりするとやっぱりすごいありがたいと思ったっていうのもありますし・・・。優しくない人もたくさん世の中で見てきたので。やっぱ優しい人って本当の意味で強いなって思ったんです。(後略)

── 優しく強く社会に怒り続けていきたい人(無名人インタビュー)

「・・・」のあとに、「優しい人って本当の意味で強い」という一文が出てきました。

待つとき

沈黙が怖いときは、意味を読み替えてみてください。相手が黙った。それは、考えているからであることが多いものです。

そして、埋める役を降りてください。たいていの場合、沈黙を破るのは、探しに行っている本人です。聞き手は、注意を切らさずに、そこにいます。

あなたが「気まずい」と感じ始めてからが、相手にとっては、考える本番かもしれません。

まとめ

法則9 待つ

沈黙は、相手が考えている時間。埋めずに、待つ。

次は、知らない話を聞くときの聞き方を見ていきます。


無名人インタビューについて

無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。16人の制作メンバーが年間約400本、これまでに1,500本以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。

聞くことは愛すること。

公開

栗林康弘

このコラムを書いた人

栗林康弘(qbc)

無名人インタビュー主宰/聞く学校 校長/パーソナルコーチ

2020年に無名人インタビューを始めました。自分で872本のインタビューを聞き、423本を編集。いまは自分を含む16人の制作メンバーで年間約400本のインタビューを行い、これまでにのべ132名が聞き手・編集として参加しています。公開した実例は1,500本以上。聞き方の体系として「平聴(フラットリスニング)」を提唱し、2026年に「聞く学校」を開きました。1978年生まれ。(「聞いた」「編集した」は2026年6月30日、チームの本数は2026年8月1日時点)

栗林康弘のプロフィール →
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