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COLUMN

質問が思いつかない人のための、たった4つの質問

会話で質問が思いつかない。相手の話を聞いても、「へえ」「そうなんだ」の先が続かない。質問上手な人は、いったいどこからあんなに質問を出しているのか——。

種明かしをすると、質問の引き出しは、たくさん要りません。私たちは1,500件を超えるインタビューをしてきましたが、その骨格は、たった4つの質問でできています。

  1. 今、何をしていますか?(現在)
  2. そのとき、どんな気持ちでしたか?(感情)
  3. きっかけは何でしたか?(過去)
  4. これから、どうしたいですか?(未来)

私たちはこれを物語質問と呼んでいます。出来事、感情、きっかけ、それから。この4つが揃うと、どんな話も、ひとりの人間の物語になるからです。4つそれぞれが、実際にどれだけ働くか、現場を見てください。

質問1:「今、何をしていますか?」

インタビューの一問目は、いつもこれです。

聞き手:今は何をしている人ですか?

語り手:はら匠という名前でインド占星術の占い師をしています。 普段は、鑑定のほかに、勉強仲間と一緒に勉強会や復習会をしていて、いつかみんなで一緒にインド占星術の館っていうサイトをやれたらいいなと考えてます。数年前に勉強仲間から「館作ってよ~」と冗談で言われてたんですけど、それを聞いたとき、「ありだな」と思って鑑定しつつ動いているという感じです。

── 高校ぐらいまで自分のこと女王様だと思ってた人(無名人インタビュー)

この一問への答えは、実際には1,200字続きました。肩書きだけでなく、これからやりたいこと、感じている限界まで出てきています。「今」を聞くと、その人の現在地が、未来の入り口ごと開くのです。

質問2:「どんな気持ちでしたか?」

出来事を聞いたら、その出来事の中の感情を聞きます。ある心理ワークを初めて体験したときのことを尋ねた場面です。

聞き手:Naokoさんが初めてこれを体験されたときってどんな気持ちでした?

語り手:実は、実際に申し込むまでに多分3・4年くらいかかってるんですよ。 申し込んで参加してしまったらとんでもないことになるんじゃないか、パンドラの箱を開けてしまうのではなかろうか、と。要は怖かったんです。恐怖感がずっとあって。

── ファミリーコンステレーションに出会ってどんどんくつろいで生きてる気がする人(無名人インタビュー)

「どんな気持ちでした?」の一問で、語りの入り口が事実から感情に切り替わりました。「怖かった」から始まる話は、「参加しました」から始まる話とは、別の深さを持ちます。出来事はニュースですが、感情は物語です。

質問3:「きっかけは何でしたか?」

現在の話が一段落したら、その始まりを聞きます。

聞き手:何かきっかけがあったんですか?

語り手:自分自身の肌トラブルからスタートしたんですけど。自分が今までニキビ肌だったり、肌の構造とか、正しいお手入れ方法を知らないで、自分で自分のお肌傷つけて、ボロボロにしちゃって、皮膚科に行っても良くならず。 そんなお肌を見ては、嫌な気持ちになったり、自分に自信が持てなくなって。

── 現状リセットして「本当にどうしたいの?」ってまず自分から未来を描くことがすごい大切なんだなって実感した人(無名人インタビュー)

「きっかけ」の一語で、コンプレックスから始まる2,000字の物語が出てきました。人が何かをしているとき、その裏には必ず始まりの物語があります。そして人は、自分の始まりの物語を、聞かれるのを待っています。

質問4:「これから、どうしたいですか?」

最後は、未来です。

聞き手:では、未来について質問させていただくんですが、5年後、あるいは死ぬときまで想像して、未来について、どういったイメージをお持ちですか?

語り手:うん。そうですね。だから別に親とかそのなんていうの、自分自身の親を責めてるわけでもないし、別に嫌いなわけではないんですよね、あったとしても。そういうふうになれないですよね、なんか知らんけど。 だから、自分の親に対しては、やっぱ親も親でやっぱ自分を責めて生きてきてるから、途中から記憶がなかったりする部分も出てきてるんですよ。同じなんですよね。それを望んでないんですよね。

── 家族っていう形がずっとなかった家庭で育ってきてるから自分は家族を作り上げたい人(無名人インタビュー)

未来を聞いたのに、答えは過去と価値観を引き連れて出てきています。これが未来質問の面白いところです。人がこれからどうしたいかには、その人が何を経てきたかが全部詰まっている。未来は、その人の全体を映す質問なのです。

4つで足りる理由

現在、感情、きっかけ、これから。気づいた方もいると思いますが、これは物語の構造そのものです。漫画の主人公は、今何かをしていて(現在)、何かを感じていて(感情)、始まりの事件があって(過去)、目指すものがある(未来)。この4点が揃うと、事実の羅列が物語になります。

質問が思いつかないのは、引き出しが少ないからではありません。地図を持っていないからです。相手の話がどこにいても、この4方向のどこかがまだ空いています。出来事を聞いたら、気持ちが空いている。今の話を聞いたら、きっかけが空いている。空いている方向に、ひとつ聞く。それだけで、会話は続きます。

しかも、この4つはすべて、答えを決めつけていません。「楽しかったですか?」ではなく「どんな気持ちでしたか?」。相手は、自分の言葉で答えるしかない。だから、話が深くなります。

まとめ

質問の引き出しを増やす必要はありません。現在・感情・きっかけ・これから。この4つを覚えて、空いている方向に聞く。それだけで、目の前の人の話は、物語になっていきます。

そして物語になった話は、面白い。質問が思いつかない悩みの出口は、実は「相手の話が面白くなること」なのです。


無名人インタビューについて

無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。約20名のインタビュアーが年間約400件、これまでに1,500件以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。

聞くことは愛すること。

公開

栗林康弘

このコラムを書いた人

栗林康弘(qbc)

無名人インタビュー主宰/聞く学校 校長

2020年に無名人インタビューを始めました。自分で872人の話を聞き、423本を編集。いまは16人の制作メンバーとともに年間約400件のインタビューを行い、これまでにのべ132名が聞き手・編集として参加しています。公開した実例は1,500件以上。聞き方の体系として「平聴(フラットリスニング)」を提唱し、2026年に「聞く学校」を開きました。1978年生まれ。(2026年8月21日現在)

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