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インタビューでやってはいけない3つの返し

インタビュー中、相手が話し終えて、こちらの番が来ます。何か言わなければ、と思う。沈黙が怖い。それで、つい口が動きます。「すごい」「まさにそういうことですよね」「私も実は」。どれも会話としては感じのいい返しですが、インタビューとしては失敗です。

やってしまう返しは、だいたい3つに集約されます。共通しているのは、話の中心が、相手からこちらへ移ってしまうことです。

インタビュアーの役割は質問することであって、話すことではありません。言いたくなったら、それを質問に変える。それだけで3つとも防げます。

日常の会話でやめるべきことは聞き上手の誤解。うなずいていれば良いわけではないに5つ挙げました。この記事は、そのうち取材の現場でとくに効く3つを、実際の記事の場面で見ていきます。全体の手順はインタビューの仕方|急に取材することになった人のための手順にまとめています。

なお、以下に出てくるパンケーキのやりとり(相手の発言・×・○とも)は、説明のために作った架空の例です。実在の記事から引いたものではありません。実際の記事からの引用は、そのつど出典を付けています。

1|感想を言ってしまう

いちばん多いのがこれです。

相手:週8食はパンケーキ食べてますね。

×「そんなに食べてるんですか。すごい」 ○「どうしてそんなに食べるんですか?」

「すごい」と言われた側は、話しにくくなります。褒められたので、「いやいや」と言うくらいしかない。「どうしてそんなに食べるんですか」と聞かれたら、理由を話すことになる。そして理由の中に、その人が出ます。

実際の記事を見てください。学校を離れてフリースクールを開いた方が、こう話しました。

それこそ残業は毎月200時間、で、300連勤とかしてたので。野球部の監督とかもしてたので。もう本当に300連勤とかしてたので。生徒も教師も余裕がないっていう感じで。

── 5年後も死ぬ直前もその瞬間にしたいことをしている自分であり続けたい人(無名人インタビュー)

思わず「すごいですね」と言いたくなる数字です。同時に、聞き流してはいけない数字でもあります。インタビュアーは驚きを口に出さず、こう置きました。

「今現在働き方を変えて仕事をしていて、どういうふうに感じますか?」

やっぱり生徒と向き合う時間っていうのが、生徒や保護者と向き合う時間っていうのがやっぱり多いというか。忙殺されるような毎日の中で、生徒がこう、なんて言うのかな、バタバタしてる中で、腰を据えて1時間話すとか、そういったことはなかなかできないんですけど。やらなきゃいけないことが多いんでね、学校は。

── 同記事(無名人インタビュー)

「200時間」「300連勤」に反応せず、その後どうなったかを聞きました。だから「腰を据えて1時間話す」という、いま大事にしているものが出てきました。

驚きを口に出さないことと、深刻さを受け止めないことは別です。評価の言葉を返すかわりに、その数字がその人に何をもたらしたのかを聞いてください。数字そのものには中身がありません。中身は、そうなった理由と、そのあとに起きたことのほうにあります。

「すごい」と言えないのは冷たいのではないか、と感じる方は共感できないまま、話は聞けますもあわせて読んでみてください。

2|上手いことまとめてしまう

これは、聞く力がある人ほどやってしまいます。

相手:パンケーキは朝食にもなるしスイーツにもなるし、いろんな楽しみ方ができます。

×「まさに万能選手ですよね」 ○「一番好きな食べ方は何ですか?」

うまくまとめると、相手は「そうそう、そうなんですよ」と言います。気持ちのいいやりとりですが、話はそこで終わります。まとめとは、話を閉じる行為だからです。

まとめたくなったら、逆に一段降ろしてください。抽象が出てきたら、具体を聞く。

会社の広報をしている方が、パートナーとの暮らしをこう語りました。

なので一般的な家庭とは違うパターンにはなると思うんですけど。自分たちらしい感じで、この雰囲気は継続していけたらいいのかなと思いますね。

── 着物で出社するお酒の会社の広報の人(無名人インタビュー)

きれいにまとまっています。「素敵な関係ですね」と返したくなる場面です。インタビュアーはこう聞きました。

「2人の中で大事にしている時間っていうのは、具体的にはどういったことがありますか。」

絶対に毎日、どんなに遅くに帰っても、一杯はお酒飲むようにしてます。私が帰るまでは、ほぼほぼ絶対待っててくれるので。絶対にお酒は一杯は。飲んで帰ってきたとしても、絶対に一杯は飲んでいて、そこに別に会話があってもなくても。お互いただお酒飲みながらスマホ見てるだけとか、ほとんどそんな感じなんですよ。

── 同記事(無名人インタビュー)

「会話があってもなくても、お互いスマホを見ているだけ」。まとめてしまったら、出てこない場面です。記事にしたとき人が覚えているのは、こういうところです。

ひとつ補足します。理解の確認としての要約(「◯◯ということですね?」)は有効な技術です。話がこみ入ったときに、こちらの理解が合っているか確かめるのは必要な作業です。問題なのは、確認ではなく評価として言い切ってしまうまとめのほうです。「万能選手ですよね」は確認ではなく採点になっています。

ただし、確認のつもりの要約でも、相手がまだ言葉を探している最中に置くと、探索そのものが止まります。この危うさは「わかる」と言った瞬間、相手の言葉が死ぬに書きました。

「具体的には」「たとえば」「一番」。この3語を手元に置いておいてください。まとめたくなったときの逃げ道になります。

3|自分の話をしてしまう

3つめは、いちばん自覚しにくいものです。

相手:パンケーキを作るのにもハマっていて、家族からも好評です。

×「私もパンケーキよく作っていて、恋人からめちゃくちゃ褒められて、作るのリクエストされます」 ○「具体的に、家族からどういった感想をもらっていますか?」

これをやってしまうのは、相手と仲良くなりたいからです。共通点があると嬉しい。悪気はまったくありません。でも、この瞬間に話の中心はこちらへ移ります。相手は今度、こちらの話に相槌を打つ側になります。

危ないのは、相手が話しているのが「自分も持っている体験」のときです。修学旅行、一人暮らし、家族、好きな食べもの。「わかります、私も」と言いたくなる話題ほど、こらえてください。

こんな場面があります。語り手が、高校の記憶として旅行のことを挙げました。誰でも持っている話題です。インタビュアーはこう聞きました。

「旅行はどうして印象に残ってるんですか?」

修学旅行は長崎だったんですけど。あ、九州か、福岡長崎熊本みたいな。高2とかのくせして、いっつも鬼ごっこしてて。佐世保のハウステンボスでやった鬼ごっこが楽しすぎて。すごい印象に残ってるのと。 あと長崎の、夕陽が丘そとめっていう道の駅があるんですけど、そこで見た夕日がめちゃくちゃ綺麗で、すごい鮮明に覚えてて。

── 子供できてから未来のことを考えるのが楽しくて楽しくて。人(無名人インタビュー)

この人はこのあと、海に沈む夕日を見たことがなかったから衝撃だった、と続けます。修学旅行という、誰もが持っている体験の中から、この人にしかない記憶が出てきました。

もしここで「私の修学旅行も九州で」と言っていたら、鬼ごっこも夕日も、出てこないまま終わっています。共通体験は、こちらが語る材料ではなく、相手の固有の記憶への入り口です。

なぜ、この3つなのか

3つとも形は違いますが、起きていることはひとつです。

相手が話しているあいだ、話の中心は相手の中にあります。感想を言う、まとめる、自分の話をする。このどれをやっても、中心はこちらへ移ります。移った中心は、そう簡単には戻りません。相手が、こちらの話に合わせる側にまわってしまうこともあります。

だから、対処もひとつです。言いたくなったら、それを質問に変える。

  • 「すごい」と言いたい → 「どうしてそうなったんですか」
  • 「つまりこういうことですね」と言いたい → 「具体的にはどういうことですか」
  • 「私も」と言いたい → 「あなたはどうでしたか」

慣れるまでは不自然に感じます。冷たい人だと思われないか、心配になります。私たちの経験では、質問を返された人のほうが「ちゃんと聞いてもらえた」と言ってくれることが多いです。感想は誰にでも言えますが、質問は、その人の話を聞いていないと作れないからです。

正直に書くと、私たちも毎回できているわけではありません。「すごいですね」と言ってしまって、そこで話が終わった回はいくらでもあります。3つとも、意識していないと必ずやります。

まとめ

インタビューでやってはいけない返しは3つです。感想を言う。まとめる。自分の話をする。

どれも会話としては正しく、インタビューとしては間違っています。話の中心が相手からこちらへ移るからです。

対処は簡単で、言いたくなったことを質問に変換するだけです。「すごい」を「どうして」に、「つまり」を「具体的には」に、「私も」を「あなたは」に。

そして、これは我慢ではありません。感想を飲み込んだ先に出てくる話のほうが、感想を言って返ってくる「いやいや」より、はるかに面白いからです。


無名人インタビューについて

無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。約20名のインタビュアーが年間約400件、これまでに1,500件以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用のうち、出典を付けたものはすべて公開済みのインタビュー記事からのものです(パンケーキの例は説明のために作った架空のやりとりです)。

聞くことは愛すること。

公開

栗林康弘

このコラムを書いた人

栗林康弘(qbc)

無名人インタビュー主宰/聞く学校 校長

2020年に無名人インタビューを始めました。自分で872人の話を聞き、423本を編集。いまは16人の制作メンバーとともに年間約400件のインタビューを行い、これまでにのべ132名が聞き手・編集として参加しています。公開した実例は1,500件以上。聞き方の体系として「平聴(フラットリスニング)」を提唱し、2026年に「聞く学校」を開きました。1978年生まれ。(2026年8月21日現在)

栗林康弘のプロフィール →
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