無名人時計主宰の書斎
COLUMN

法則12 引き算で聞く|聞き上手になりたい人が、足すのをやめると話が流れ出す

聞き上手になりたいと思って調べると、だいたい同じことが書いてあります。目を見る。うなずく。相槌を打つ。共感を示す。オウム返しをする。

覚えて、やってみる。それなのに、なぜか話が深まらない。相手の話が、途中で萎んでいく。

聞き上手は、何かを足すことではありません。

聞き方から考える話し方。法則12は、引き算です。

法則12 引き算で聞く

足さずに、引く。アドバイス・感想・思い出話・共感の表明・まとめの五つを、やめる。

足したものが、話を潰す

「不快な相槌」というワークがあります。フラットリスニング講座で行っているものです。

インタビュアー役が質問して、相手が答え始めた瞬間に、「はい。はい。」と相槌をかぶせる。わざとやります。悪い聞き方を体験するためです。

やられた側は、気分が悪くなります。たとえば「冷凍うどんをゆでてぶっかけにして、ゆずの絞り汁で風味づけて食べました」というだけの話でも、相槌ひとつで話しづらくなります。

うどんの話ですら、そうなります。もっと大事な話なら、なおさらです。

足したものは、リアクションでした。話を潰したのは、その足し算です。

聞き方から考える話し方 法則12 引き算で聞く。足さずに、引く。アドバイス・感想・思い出話・共感の表明・まとめの五つを、やめる。× アドバイスや感想を足す ○ 五つをやめて、聞く

五つをやめる

聞き上手になろうとする人は、何かを足そうとします。良いリアクション、気の利いた返し、豊かな共感表現。でも、会話の中で誰もが自然にやってしまうことがあります。

  • アドバイスする
  • 感想を言う
  • 自分の思い出話をする
  • 共感の表明をする
  • 話をまとめてあげる

この五つを、やめます。

どれも、悪意のない行動です。むしろ善意です。役に立ちたくてアドバイスし、ちゃんと聞いていると伝えたくて感想を言い、親近感を出したくて自分の話をする。

でも、話し手の側から見ると、五つは同じものです。自分の話す場所が、聞き手に取られていく。

聞き手が自分を出すたびに、相手の話す場所が消えます。うまい質問を繰り出さなくても、悪手をやめれば、相手の話は勝手に流れ始めます。

アドバイスは法則15 アドバイスを質問に変える、共感の表明は法則13 共感しなくていいで、それぞれ扱います。

口を閉じていても、足していることがある

「私は聞き役に徹しているから大丈夫」という方。聞きながら、頭の中で何を考えていますか。

次に何を言おうか。自分だったらどうするか。この話、自分のあの経験に似ているな。

口を閉じていても、頭の中が自分のことでいっぱいなら、それも足し算です。相手の話は、次に自分が話すための待ち時間になっています。話し手には、それも伝わります。

聞くとは、口を閉じることではなく、注意のすべてを相手に向けることです。うなずきは、その結果として自然に出るものです。目的ではありません。

やめると、口がうずうずする

五つをやめてみると、最初はぎこちなく感じます。口がうずうずする。何か言いたくなる。

そのうずうずの強さは、ふだんの自分が「話す側」に張り付いていた度合いの、一つの目安かもしれません。そこを越えると、相手の話が変わることがあります。

引き算に、才能は要りません。やめるだけだからです。

まとめ

法則12 引き算で聞く

足さずに、引く。アドバイス・感想・思い出話・共感の表明・まとめの五つを、やめる。

次の法則13では、五つのうち、いちばんやめにくい「共感の表明」を見ていきます。


無名人インタビューについて

無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。16人の制作メンバーが年間約400本、これまでに1,500本以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。

聞くことは愛すること。

公開

栗林康弘

このコラムを書いた人

栗林康弘(qbc)

無名人インタビュー主宰/聞く学校 校長/パーソナルコーチ

2020年に無名人インタビューを始めました。自分で872本のインタビューを聞き、423本を編集。いまは自分を含む16人の制作メンバーで年間約400本のインタビューを行い、これまでにのべ132名が聞き手・編集として参加しています。公開した実例は1,500本以上。聞き方の体系として「平聴(フラットリスニング)」を提唱し、2026年に「聞く学校」を開きました。1978年生まれ。(「聞いた」「編集した」は2026年6月30日、チームの本数は2026年8月1日時点)

栗林康弘のプロフィール →
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