無名人時計主宰の書斎
COLUMN

法則13 共感しなくていい|共感できない話を聞くときは、質問で受ける

人の話を聞くとき、共感しなければいけないと思っていないでしょうか。相手の気持ちがわからなければ、ちゃんと聞いたことにならない。だから、共感できない自分は聞き手として失格だ。

この前提が、そもそも違います。共感は、聞くことの必須条件ではありません。共感を口にしないほうが、話が開くこともあります。

聞き方から考える話し方。法則13は、共感の代わりに質問で受けることです。

法則13 共感しなくていい

共感の言葉で受けずに、感情・事実・時間軸の質問で受ける。

共感で受けると、話が閉じる

「大変でしたね」「つらかったですね」と受けると、相手は「はい」と答えます。その話は「大変だった話」として、そこで閉じます。

質問で受けると、話は次へ動きます。受け方は三つあります。感情を尋ねる、事実を確かめる、時間を動かす。

インタビューの現場から、一つずつ見ていきます。

聞き方から考える話し方 法則13 共感しなくていい。共感の言葉で受けずに、感情・事実・時間軸の質問で受ける。× 「わかります」と受ける ○ 気持ちや事実を質問する

感情の質問で受ける

お子さんが1歳半の健診で言われたことのあと、家に帰って1週間泣き続けた、という語りの場面です。

「そのときどんな気持ちでしたか?」

それがわからなかったんですよね、なんで泣いてるのか。ずっとわからなくて、でも涙だけは止まらなくて。1週間泣き続けて、やっと気づいたのが、自分がかわいそうで泣いてたっていうこと。なんでかっていうと、息子に障害があってこんな子に産んでごめんねとかっていうよりも、自分が障害のある子の親になるっていうことのショックさに泣いてたっていう。(後略)

── もしあなたが今夜目をつむって、そのまま死ぬとしたら、今日一日あなたはどうやって過ごしますか? 人(無名人インタビュー)

聞き手が置いたのは、「どんな気持ちでしたか」という質問です。語り手は、自分でもわからなかった涙の理由に、話しながらたどり着いています。その理由は、こんな子に産んでごめんね、という思いよりも、自分が障害のある子の親になることのショックだった、と語り手自身が話しています。

事実の質問で受ける

感情の言葉が出てきたとき、事実を確かめる質問で受ける型もあります。

離婚に向けて動いていた方の語りです。悲しかった時期のことを「終わった話」と話したあと、聞き手が事実を確かめます。

(前略)だから、確かにそのとき悲しかったなとかっていうことはあるんですけど、もう何か1エピソードとしても終わった話というか、他人ごとみたいな感じになってますね。

「離婚はまだされてないんですか?」

そうなんです。というか、調停がうまくいかなかったのがいつだっけな。10月11月くらい、秋くらいだったんですけど。もうこの世の終わりだと思ってどうしようと思って。もう仕方ないと思って。(後略)

── 私が今まで好きだったものを否定されてたような感じがしたから離婚する人(無名人インタビュー)

事務的にも見える質問です。聞き手は、事実をひとつ確かめただけです。語り手はそこから、調停がうまくいかなかったときの気持ちと、その後の生活へと、話を続けています。感情に感情で応えなくても、話は受け取れます。

時間を動かす質問で受ける

つらかった話が出たときは、時間を先へ動かします。

会社勤めの日々を語った、ある方の場面です。

(前略)モラハラとパワハラの連続でした。それで、2年目の半ばで無茶な仕事を押し付けられて、過労で倒れたんです。自律神経失調症になっちゃって。

「その後は?」

上の人たちは頑張ってくれたけど、私は3年4ヶ月で辞めました。(後略)

── 人を助けたい人(無名人インタビュー)

「つらかったですね」で止めずに、時間を先へ進める。すると、会社を辞めるまでの経緯へと、話が動きます。共感で受けると、話はその感情の場所に留まります。質問で受けると、話は動き続けます。

わからないまま、聞いていい

三つの実例に共通するのは、聞き手が共感を「感じる」ことも「示す」ことも求められていない、という点です。やっているのは、相手の話を受け取って、次の質問を置くことだけです。

共感できないとき、無理に「わかります」と言う必要はありません。本当はわかっていないことは、相手に伝わります。

あなたの誠実さは、共感の演技ではなく、質問で伝わります。ちゃんと聞いていなければ、次の質問は出せないからです。

共感できないと悩む人は、聞き手として失格なのではありません。共感という一種類の受け方しか、教わってこなかっただけです。

まとめ

法則13 共感しなくていい

共感の言葉で受けずに、感情・事実・時間軸の質問で受ける。

わからない相手の話にこそ、聞く価値があります。わかってしまったら、聞く必要がないからです。

次の法則14では、共感しなくても相手の感情は受け取れる、という聞き方を見ていきます。


無名人インタビューについて

無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。16人の制作メンバーが年間約400本、これまでに1,500本以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。

聞くことは愛すること。

公開

栗林康弘

このコラムを書いた人

栗林康弘(qbc)

無名人インタビュー主宰/聞く学校 校長/パーソナルコーチ

2020年に無名人インタビューを始めました。自分で872本のインタビューを聞き、423本を編集。いまは自分を含む16人の制作メンバーで年間約400本のインタビューを行い、これまでにのべ132名が聞き手・編集として参加しています。公開した実例は1,500本以上。聞き方の体系として「平聴(フラットリスニング)」を提唱し、2026年に「聞く学校」を開きました。1978年生まれ。(「聞いた」「編集した」は2026年6月30日、チームの本数は2026年8月1日時点)

栗林康弘のプロフィール →
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