病気のこと。お金のこと。家族のこと。仕事の失敗のこと。聞きたいけれど、聞いていいのか分からない。
踏み込んで、相手を傷つけたらどうしよう。そう思って、聞きにくいことを飲み込んでしまう。誰にでも、そういう経験があると思います。
聞き方から考える話し方。法則16は、聞きにくいことの聞き方です。
法則16 輪郭だけ確かめる
聞きにくいことは、中身に踏み込む前に輪郭を確かめ、答えの範囲は相手に任せる。

中身の前に、輪郭がある
重い言葉が出てきたとき、すぐに中身を聞きたくなります。何があったのか、どうしてそうなったのか。
そこで一度、止まります。先に確かめるのは、輪郭です。その言葉が、誰のことで、どこまでの範囲なのか。中身ではなく、言葉のふちを確かめます。
輪郭を確かめる質問は、答えが短くてすみます。だから相手は、答えるかどうかを、自分で決められます。
インタビューの現場では
無名人インタビューの実際の回です。語り手は、風俗の仕事をしていたことを、誰にも打ち明けられなかったと話しました。
(前略)結局、風俗勤めをやってること誰にも打ち明けられないし。(中略)
聞き手は、この言葉のふちを確かめます。「誰にも」の範囲です。
「誰にもっていうのは、例えば学生時代のご友人とか、そういう感じなんでしょうか?」
話すことはできたと思うんだけれども。ただ、風俗勤めというのがめちゃめちゃ、今はもう開き直ってるんでいいんですけれども。言えなかったんですよ。軽蔑されるとか。どんな理由があっても、やっぱりそういう、何かマイナスな面で見られてしまうっていう。気持ち悪いっていうふうに見られてしまうんじゃないかっていうことで。結局誰にも言えなくて。(後略)
── 父親の奪った私の時間ちゃんと取り戻した人(無名人インタビュー)
聞き手がしたのは、範囲の確認だけです。「例えば学生時代のご友人とか」は、気持ちを推測して決めつけているのではなく、「誰にも」がどこまでかを確かめる質問です。驚くことも、評価することも、慰めることもしていません。
それだけで、語り手は、言えなかった理由まで自分の言葉にしています。
答えの範囲は、相手が決める
範囲を確かめる質問は、「そうです」「いえ、そうではなくて」と、短く答えられます。そこから先、どこまで話すかは、話し手が決めます。
話すかどうかを決めるのは、いつでも話し手です。「どこから、どこまで話すか」を、相手に渡しておく。話せる形の質問を置くのが、聞き手の仕事です。
つまずいたとき
輪郭を確かめても、相手が答えないことがあります。その場合は、そこまでにします。
こじ開けることは、しません。話すかどうかは、相手が決めることだからです。
重い言葉が出たときに、驚いた顔をしないことも大事です。普通のトーンで、範囲だけを確かめます。それが「話し続けていい」という合図になります。
なお、相手の気持ちを「こうだろう」と決めつけずに聞く話は、法則7 決めつけないで扱っています。法則16は、それとは別で、聞きにくいことの範囲の確かめ方です。
まとめ
法則16 輪郭だけ確かめる
聞きにくいことは、中身に踏み込む前に輪郭を確かめ、答えの範囲は相手に任せる。
聞きにくさは、話題の側にあるのではなく、質問の形の側にあります。中身の前に、輪郭。答えの範囲は、相手に。
次の法則17は、話すと聞くを区切ることです。
無名人インタビューについて
無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。16人の制作メンバーが年間約400本、これまでに1,500本以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。
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- 聞き方を練習してみたい方:聞く学校(無料・オンライン)で、月に数回、会を開いています
聞くことは愛すること。
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