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COLUMN

インタビューで話を深掘りするコツ。質問は同じ話題に重ねる

インタビューで話が深掘りできないのは、質問が下手だからではありません。同じ話題に質問を重ねた回数が足りないだけです。こちらが質問し、相手が答え、「なるほど」と言って次へ。それを20回くり返すと、全部の質問に答えてもらったのに、記事にできる場面がひとつも残らない、ということが起きます。

私たちが無名人インタビューで深い話が出た回を見返すと、共通しているのは質問の巧みさではなく、ひとつの話にしつこく留まっていることでした。

深さは、質問の質ではなく、質問を重ねた回数で決まります。

企画から公開までの全体の流れはインタビューの仕方|急に取材することになった人のための手順にまとめています。この記事は、そのうち本番の進め方だけを詳しく扱います。

聞き手が50文字、語り手が1,666文字

実際の記事を見てください。絵を仕事にしたいとやっと思えるようになった、と語り手が話した場面からです。

インタビュアーはこう聞きます。

「それはいつから好きなんですか?」

絵は幼稚園の頃から好きで、美大に行きたかったができなかった、と返ってきます。ここで次の話題に移らず、こう続けます。

「何歳?」 「受験の時ってことですか?志望校選び?」

進路を選べなかったこと、そのわだかまりが長く残ったことが語られます。そして最後の質問です。

「なんで、そうなれたんですか?」

きっかけは、7ヶ月前、去年の11月ぐらいに、上司とめちゃくちゃぶつかって。ぶつかったっていうか、今までにないぐらい理不尽なことを自分に言われたなっていうのを自分で認識してて。 私、今まで看護師してたときも、同じような構図で転職してたんですよ。うまく上司とコミュニケーションが取れなくて、辞めるみたいな構図を繰り返してて。 半年前ぐらいのときに上司とぶつかったときに、同じ構図を繰り返してることをめちゃくちゃ実感したんですよ。

── 母の価値観で生きてきた人(無名人インタビュー)

この4往復で、インタビュアーが話した量は合計50文字です。語り手は1,666文字話しました。

そして最後の「なんで、そうなれたんですか?」は、事前の質問リストには絶対に書けません。「そうなれた」という状態が3往復目までに出てこなければ、この質問は存在しないからです。

質問は平凡でいい。「その後は?」を重ねるだけで足りる

うまい質問をひねり出そうとしなくて大丈夫です。時系列に沿って進めるだけでも、同じことが起きます。

大学を出てから何度か職を変えてきた方への、3往復です。インタビュアーが言ったのは、これだけでした。

「大学以降は、どんな生活を送られていましたか?」 「その後は、どんな生活を送られていました?」 「広告代理店には、どうして入られたんですか?」

合計63文字。この3問で、配送の仕事で体を壊したこと、フリーターを経て営業職に就いたこと、その職場で厳しい叱責が続いたことが順に語られ、最後にこう着地します。

そしたら気づいたら僕急に、嗚咽上げて泣いてたんですよ。あっはっは。普段の明るい僕を知ってる人間からしたらドン引きですよね(笑)年下も女の子もおるのにそんなん関係なしに、髭生えてて体でかくて目つき悪い奴が幼稚園児の様に泣き出したら。(笑) それを見た友人達が、そんなんやったら辞めーやみたいな感じで、自主退職した感じですね。 あっ辞めていいんや みたいな。

── 人に必要とされたい。ただ実際には能力がないんで嘘偽りで固めてきた人(無名人インタビュー)

聞き手63文字に対して、語り手は3,039文字。「その後は?」というほとんど内容のない質問を、評価も助言も挟まずに置き続けただけです。

なお、こういう話が出てきたときに聞き手がすべきなのは、さらに深掘りすることではありません。いったん手を止めて、相手の様子を見てください。話せるところまで話してもらう、が原則です。

深さはテーマの重さではなく、重ねた回数で決まる

深い話というと、つらい過去の話を想像するかもしれません。そんなことはありません。部活の話でも同じ構造になります。

高校時代の部活の話をした方への、4往復です。

「何部ですか?」 「やってみてどうでした?」 「高校の後の進路選択はどうされたんですか?」 「大学時代はどうでしたか?」

合計49文字に対して、語り手は1,270文字。テレビドキュメント部門を選んだのはライバルが少なかったからだ、と語られたあと、こう続きます。

ただ、元々テレビドラマが第一希望だったんですよ。でもやっぱりテレビドラマが一番人気で、人も多くて。 なので、自分のやりたいようにはできるかもしれないけど、結果として残すっていう意味では、やめた方がいいなと思って、逃げちゃったんですよね。これも。

そして最後に、こうまとめています。

そういう経験をしたからこそ、だいぶ視野は広がったと思います。芸術を極めるっていう意味ではそういうところに行くべきだったのかなとも思いますけど、全く違うものを経験したことによって、ちょっと芸術を俯瞰して見ることができたのかなとは思います。

── 自分のやりたいと思ったことは絶対に曲げない方が自分のためにもなる。人(無名人インタビュー)

部活と進路の話だけで、「逃げちゃった」という自己認識と、それを引き受け直した価値観まで出てきています。テーマの重さより、重ねた回数のほうがはるかに効きます。

重ね方には順番がある

やみくもに重ねるのではなく、順番があります。私たちが物語質問と呼んでいる4つです。相手が何か出来事を口にしたら、この順に置いてください。

  1. 出来事:何があったのか。「バスケットボールをしていました」
  2. 感情:そのときどう感じたか。「やっているときはどんな感情になりましたか?」
  3. きっかけ:なぜそうなったか。「始めたきっかけは何だったんですか?」
  4. それから:その後どうなったか。「今も続けているんですか?」

この4つについては質問が思いつかない人のための、たった4つの質問で、日常の会話を例に詳しく書いています。取材でも同じものを使います。違うのは、取材ではこの4つを1周させて終わりにしないことです。ひとつの出来事に対して1周し、その中で出てきた次の出来事に対してまた1周する。それを繰り返します。

この順で聞くと、事実の羅列がその人の物語になります。3の「きっかけ」は、さらに枝分かれさせられます。「スラムダンクを読んで始めました」と返ってきたら、「どういうところが良かったんですか」「読んでてどんな感情になったんですか」と、もう一段下りられます。

うまくいかないときは、たいてい1で次の話題に移っています。出来事を聞いて「なるほど」と言って次へ。それだと、その人がそこにいません。次に行きたくなったらやってはいけない3つの返しを思い出してください。

相手が乗ってこないとき

社内報や学校の課題では、相手が自分から来たわけではないことがあります。「特に話すことないですよ」から始まるのが普通です。

このとき、質問を工夫しても効きません。効くのは順番です。

  1. まず、答えが決まっている質問から入る。「今の部署は何年目ですか」「だいたい何時に来られるんですか」。広い質問は、口が温まってからでないと機能しません
  2. 次に、事実を聞く。「朝いちばんにすることって何ですか」
  3. そこから初めて、感情を聞く。「それ、慣れるまで大変でしたか」

「今どんな感じですか」のような広い質問を最初に置いていいのは、自分から話したくて来ている相手のときだけです。応募して来てくれる人が相手の私たちは、最初から広く聞けます。そうでない場面では、この3段を踏んでください。

当日の進め方は、4つ決めておけば足りる

  • 録音する。メモに集中すると相手を見られなくなります
  • メモは質問だけ書く。思いついた瞬間が聞くべきタイミングとは限りません。時間・キーワード・質問だけ短く書いて、話が一段落してから聞きます
  • 60分なら話題は3つ。1話題20分あれば4〜5往復は重ねられます。話題を10個用意すると、ほぼ確実に一問一答になります
  • 待つ。相手が黙っても、こちらから埋めない。考えている時間です。詳しくは沈黙が怖い人へ。待つ技術に書いています

まとめ

インタビューで深掘りできるかどうかは、質問の出来ではなく、同じ話題に何回留まったかで決まります。

聞き手が50文字しか話していないのに、語り手が1,666文字話す。そういうことが実際に起きます。起きたときの聞き手は、うまいことを言っていません。「何歳?」「なんで?」と短く置いて、あとは待っています。

うまく聞こうとすると、話題を変えたくなります。次の質問に行きたくなる。その気持ちをこらえて、もう一問だけ同じ話に重ねてみてください。だいたい、3往復目から先に、その人にしかない話があります。


無名人インタビューについて

無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。約20名のインタビュアーが年間約400件、これまでに1,500件以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。

聞くことは愛すること。

公開

栗林康弘

このコラムを書いた人

栗林康弘(qbc)

無名人インタビュー主宰/聞く学校 校長

2020年に無名人インタビューを始めました。自分で872人の話を聞き、423本を編集。いまは16人の制作メンバーとともに年間約400件のインタビューを行い、これまでにのべ132名が聞き手・編集として参加しています。公開した実例は1,500件以上。聞き方の体系として「平聴(フラットリスニング)」を提唱し、2026年に「聞く学校」を開きました。1978年生まれ。(2026年8月21日現在)

栗林康弘のプロフィール →
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