インタビューをすることになって、まず作るのが質問リストです。そして作りながら不安になります。何問用意すればいいんだろう。当日、聞くことがなくなって黙り込んだらどうしよう。その不安からリストはどんどん長くなり、20問、30問になり、当日それを読み上げて一問一答で終わります。
質問リストは台本ではなく、保険です。
台本として使うと一問一答になります。保険として持つと、リストにない質問が出てきます。そして深いところに届くのは、たいていリストになかったほうの質問です。
先に結論を書きます。用意するのは、目的1行と、広い質問3つ。理由はこのあとに書きます。企画から公開までの全体の流れはインタビューの仕方|急に取材することになった人のための手順にまとめました。
リストはこう作る
- 目的を1行で書く。「この人の何を記事にしたいのか」。ここがぶれると、当日どの話を追えばいいか分からなくなります
- 聞きたいかたまりを3つだけ決める。たとえば「今していること」「そこに至るまで」「これから」
- かたまりごとに、広い質問を1つずつ書く。「今、どんな感じですか」「そこに至るまではどうでしたか」「これからどうしたいですか」。これはたった4つの質問で書いた物語質問のうち、現在・過去・未来の3つです。残るひとつの「どんな気持ちでしたか」は、事前には書けません。相手が何か出来事を話したその場で使います
- 予備の質問を2〜3本だけ足す。誰が相手でも使える形のものです。「一番よく覚えていることは何ですか」「意外だと言われることはありますか」。話が止まったときに開くのは、この2〜3本です
- 順番は時系列にしておく。迷ったら過去から未来へ。人は自分の時間の順なら話しやすい
- 時間配分を決めておく。60分なら1かたまり20分。ここを決めておかないと、最初の話題で40分使って終わります
相手に合わせた深掘りの質問は書きません。書けないからです。それは当日、相手の言葉から作ります。リストに書けるのはここまでで、ここから先は現場で生まれます。
以下、なぜ3問で足りるのかを、実際の記事で説明します。
広い質問ほど、相手は遠くまで話す
質問リストを作るとき、私たちはつい質問を具体的にします。そのほうが答えやすいだろう、と思うからです。でも実際は逆のことが起きます。
長く仕事を続けているある方へのインタビューで、インタビュアーが置いた質問はこれだけでした。
「ざっくり、今どんな感じですか?」
15文字です。何を答えてほしいのか、一切指定していません。返ってきたのは、1,693文字の語りでした。
この5年間で500名、500社ほどコンサルいたしまして。特にですね、個人、女性の方で無名の専業主婦から、稼ぐ起業家になったとか、あと有名アーティスト、アーティストといっても歌音楽の方ではなくて、イラストレーターさんとか造形作家さんとか、制作物を作る方たちなんですけど、ちょっと有名になったとか。活動の場を海外まで拡げたとか。
── 自分で決めたことをやっていく人(無名人インタビュー)
この人はこのあと、経歴、YouTubeを続けたこと、そこから仕事につながった経緯まで、一息に話しています。
もしここで「何年目ですか」「何社ですか」と具体的に聞いていたら、返ってくるのは年数と社数の数字だけだったはずです。どちらも、はい・いいえでは答えられないという意味では同じオープンな質問です。違うのは、答える中身をこちらが指定しているかどうか。指定しないほうが、相手はその人にとって大事なところから話しはじめます。
目次だけ出してもらって、中身は相手に決めてもらう
もうひとつ、リストに書ける形があります。相手に目次を出してもらう、というやり方です。
人生の転機を5つ挙げてもらったあと、インタビュアーはこう聞きました。
「それぞれの理由一つ一つお聞きしてもいいですか?」
どれから話すか、どこまで詳しく話すかは指定していません。返ってきたのは1,698文字です。
1個目の中学校のときのサッカーの試合で負けたのが、僕が入ってたチームってめちゃくちゃ強かったんすよ。本当に県で優勝するぐらいのチームだったんですけど、1回戦で負けたんです、僕の代で。これの原因が、僕がそのサッカーってアディショナルタイムとかロスタイムと呼ばれるものがあって、そこで相手にPKを与えちゃって、それで負けちゃったんすよ。ほぼほぼ僕の責任で負けたんすよ、その代。
── 人生に対して思うことはあんまないんすけど、でも事業は大きくしていきたいなと思う人(無名人インタビュー)
この人はこのあと、自分で挙げた5つを順番に話していきます。
質問リストに書けるのは、ここまでです。「転機を挙げてもらう」「それぞれ聞く」の2行。中身は相手が持っているので、こちらが先に用意することはできません。
いちばんいい質問は、その場で相手の言葉から生まれる
そして、いちばん深いところに届く質問は、リストには書けません。相手が話した言葉の中にしか、材料がないからです。
留学中の方が、自分の性格をこう表現しました。
自分は「怠惰な完璧主義」だと思いますね。完璧主義なくせに、すごく怠惰なんですよ。
── 周りに求められていることや世間が正解としてることではなかったとしても、自分が頑張りたいことができてれば良いんだよ、楽しんでねって言ってあげたい人(無名人インタビュー)
インタビュアーは、その言葉をそのまま拾いました。
「『怠惰な完璧主義』とは、具体的にどういうことですか?」
留学に来て、こないだテストがあったんですけど。テストで周りからすごいって言わせたいっていうのがあったので、私は全部Aを取れるようにしようっていう目標を立てたんです。なんですけど、結局違うことしちゃったりして……。目標はすごく高いけど、それに伴う努力ができなくて。でも、本当に完璧主義なんですよね。
── 同記事(無名人インタビュー)
「怠惰な完璧主義」は、この人がその場で作った言葉です。事前にどれだけ調べても出てきません。インタビュアーがしたのは、その言葉を言い換えずにそのまま返した、それだけです。
ここで「つまり、理想は高いけど行動が伴わないということですか?」と要約して置き換えたら、相手は「まあ、そうですね」で終わったでしょう。相手の言葉のまま返すから、相手はその言葉の中身を自分で掘りに行きます。先回りして言い換えてしまうことの怖さは「わかる」と言った瞬間、相手の言葉が死ぬに書いています。
拾い方の実際はインタビューで話を深掘りするコツに詳しく書きました。
事前調査は、やりすぎない。ただし場合による
質問リストと同じくらい迷うのが、どこまで調べておくかです。
無名の個人に人生の話を聞くなら、その人が公開しているものを一通り見る程度で十分です。調べすぎると、知っていることを確認する質問ばかりになり、相手は答え合わせをさせられている気分になります。
ただし、企業や団体への取材、実名で公開する記事では逆です。過去のリリース、決算、直近の発言。調べ尽くしたうえで、当日は「改めて聞かせてください」と置いてください。裏を取らずに出すと事故ります。
まとめ
質問リストは、長いほど不安が減って、当日の話は浅くなります。
用意するのは、目的1行と、広い質問3つと、予備の2〜3本。それだけで60分は持ちます。持たなかったときのためにリストがある、という順番で考えてください。
そして当日、リストは机の上に伏せておきます。話が止まったときだけ開けばいい。それが保険という意味です。
いちばんいい質問は、相手が話し終えたあと、相手の言葉の中から生まれます。それを拾うためには、こちらの手が空いている必要があります。リストを読み上げているあいだ、手はふさがっています。
用意した質問から外れることは、失敗ではありません。外れたときにだけ、その人にしか話せない話が始まります。
無名人インタビューについて
無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。約20名のインタビュアーが年間約400件、これまでに1,500件以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。
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聞くことは愛すること。
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