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COLUMN

共感疲れの正体。音量はゼロにしない、イコライザーだけ切る

人の悩みを聞くと、ぐったり疲れる。相手の落ち込みが、自分の中に残って抜けない。優しい人ほど、この「共感疲れ」に悩みます。

そして、よくある対策はこうです。距離を取りましょう。聞き役を引き受けすぎないようにしましょう。つまり——聞く量を減らしましょう。

これは、音楽がうるさいからといって音量をゼロにするような対策です。確かに疲れませんが、聞くこと自体を失います。人の話を聞ける人でありたい、でも疲れたくない。その両立をあきらめる必要はありません。

切るべきは音量ではありません。イコライザーです。

共感疲れは、再生疲れ

共感疲れの正体を分解してみます。

相手が悲しい話をする。あなたの中で、その悲しみが再生される。相手が不安を語る。あなたの中で、不安が再生される。共感するとは、相手の感情を自分の身体をスピーカーにして鳴らすことです。60分聞けば、60分ぶん、他人の感情があなたの身体で鳴り続けます。

疲れて当然です。共感疲れは、心が弱いのでも、優しさが足りないのでもなく、単純に再生のしすぎです。

オーディオにたとえるなら、相手の話には複数の帯域があります。出来事という帯域。考えという帯域。そして感情という帯域。共感疲れする人は、全帯域をフルで再生しています。そこで、イコライザーの出番です。感情帯域の再生だけを切る。 音量——つまり相手への注意——は、フルのまま。

感情を「受信」はします。相手がいま悲しみを語っている、という情報は、完全にキャッチする。ただ、自分の身体で「再生」しない。受信と再生は、別の機能です。

再生を切っても、相手は満足する

そんな聞き方をしたら、相手は冷たいと感じるのではないか。そう思いますよね。実際のインタビューを見てください。

ADHDと診断され、休職し、「納得して死にたい」とまで語った方のインタビューです。聞き手は、共感の言葉を一度も口にしていません。質問と相槌だけで進行しています。その終盤です。

語り手:そうだな、遺言ではないですけど、すっきりしました。聞いてもらえてスッキリしたし、自分ってこんなふうに考えてきたんだって思ったし、意外と人に自分の気持ちを話すってないからすごくすごく良かったです。 いい機会でした。

── 自分が納得して死にたいADHDの人(無名人インタビュー)

もうひとつ。お母様の産後うつと自死という、最も重い部類の話が語られたインタビューです。聞き手はここでも共感語を挟まず、活動のきっかけを問う質問でフラットに受けて進行しました。インタビューの結びの言葉です。

語り手:喋らせてもらって自分もスッキリしました。ありがとうございました!

── 子どもが困ってるときに助けてあげる大人がいっぱいいてくれたら良いなって思います。人(無名人インタビュー)

重い話を、感情を再生しない聞き手が受ける。それで話し手が傷つくどころか、「スッキリした」「いい機会でした」と言って終わっている。冷たさは、伝わっていません。伝わっているのは、音量——最後まで全部聞いてもらえた、という事実のほうです。

話し手が求めているのは、共感ではなかった

なぜ、感情を再生しなくても相手は満足するのか。そのヒントになる証言があります。家族の孤独について語った方が、終盤に「なんか、このインタビューは受けてよかったなと思います?」と聞かれて答えた言葉です。

語り手:今、この一貫して自分が話した内容を頭ん中で反芻しててなんか 思ってた以上に自分って孤独が怖いんだな っていうのを気づいたので、何か話せてよかったなって思いました。

── 未来。そうですね、どうなんだろう。難しいですね。なんか、あんまり何か、わかんないです。わかんない。わかんないです。人(無名人インタビュー)

「話せてよかった」の理由は、共感してもらえたから、ではありません。話したことで、気づきが起きたからです。

話し手が本当に必要としているのは、一緒に沈んでくれる人ではなく、最後まで話させてくれる人です。

まとめ

共感疲れの対策は、聞く量を減らすことではありません。音量はそのまま、感情帯域の再生だけを切る。相手の感情は受信する、でも自分の身体で鳴らさない。

これは訓練できる技術です。私たちのインタビュアーは全員素人ですが、この聞き方で年間400件、重い話も含めて聞き続けています。そして「スッキリした」という言葉を、私たちは数えきれないほど受け取ってきました。

疲れずに聞けるようになると、聞ける量が増えます。聞ける量が増えると、あなたの周りに、話せる人が増えます。音量をゼロにしなくて、よかったと思えるはずです。


無名人インタビューについて

無名人インタビューは、2020年から続く一般の方へのインタビュー活動です。約20名のインタビュアーが年間400件、これまでに1,500件以上のインタビューを記事にしてきました。この記事の引用はすべて公開済みのインタビュー記事からのものです。

聞くことは愛すること。

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